第207回 高校無償化からの朝鮮学校排除に抗議する文科省前金曜行動

 

2018年3月9日

 

207回 高校無償化からの朝鮮学校排除に抗議する文科省前金曜行動

 

 やや暖かくなるだろうと言う天気予報に相違して、文科省前には寒風が吹き、「朝鮮学校の子どもたちに笑顔を!」のプラカードも掛けて置けない。それを幸いに、目の前を行き交う人々を聴衆にして、強制連行で連れ来られ美唄市の炭鉱で働かされていた朝鮮人、中国人を題材にした「紅玉」(後藤竜二)を朗読する。明日、阿佐ヶ谷朝鮮学校で、「卒業第九の部屋」があり、時間を見つけてしっかり練習しようと思ったが、勤め先の障がい者グループホームで、食事、掃除、様々な記録作業があり、その上、電球が10個も切れて遠くまで買いに行ったのでできなかった。「このあたりだけが吹いているんでしょね。なんか、このあたりの状況を表しているんですかね」と、警備の刑事さんがこぼしていた。文科省前で、あたしたちが抗議の声をあげていると、経産省前からは原発反対の声が聞こえてくるし、隣の財務省前には、アンテナをつけたテレビ中継車が3台も横付けされ、森友問題の取材している。

 

 今日は、裁判の原告である学生たちが学期末試験で来られず、在日朝鮮人と日本人の大人だけの行動になった。「学生が来ないと気分がいいね」という姜義昭さんに、「どうしてよ。原告の学生が来たほうがいいでしょう」と問いかける人がいる。義昭さんが、「そうじゃないでしょう。本来なら、大人のわたしたちが学生の身分を保証し、環境を整えなければならないのに、学生にそれを負わせていて、心苦しくってたまらないんですよ。だから、試験でも何でも、高校生として普通の生活を学生がし、大人がここで頑張る構図っていうのがすっきりするんです」と答えている。「学生の本分」などと言う言葉を使うのはやぶさかではないのだが、そのような古めかしい言葉さえ正義を語るにふさわしい状況になってしまっているが悲しい現実がある。「本分」を普通に全うできるはずの学生が、それを置いても文科省前に結集し抗議させているのは誰なのか、すべての大人が、それを問われている。

 

 支援する会代表の長谷川和男さんの力強い第一声に続いて、町田、西東京第二朝鮮学校に長年関わっている菊岡伸一さんが語り始める。

 

「文科省のみなさん、今日、自分の住む町田市にある、西東京第二朝鮮学校に行き、93歳になるおじいさん、ハルボジから、2時間にわたって、いろいろなお話を聞いてきました」。伸一さんの住む、東京町田市は、米軍機が常に行き交っている。新聞にも報道されたように、横田基地には、昨年度122回もやってきた。そして、騒音にいつも悩まされている。伸一さんは、長年、町田の学校で教員をやってきた。町田市で騒音75デシベル以上の騒音地域に指定された学校では、国によって無償で行われます。都立町田高校、あるいは、町田の南地区にある学校は、多くの学校が、国によって防音工事が補償で行われている。しかし、西東京第二朝鮮学校は、防音指定区域にあるにもかかわらず、国の補償が得られていない。そういうところにも、朝鮮学校に対する差別が現れている。毎月5000円あった子どもたちに対する補助金も、カットされた。2013年には、町田中の小学1年生、中学1年生に配っていた防犯用のポケットベルが朝鮮学校の子どもだけには配られず、そのことが大きく新聞にも取り上げられ、全国から多くの抗議の声が寄せられ、復活することになった。

 

「こういうこと全ての背景に、文科省の行っている高校無償化除外につながるものがあるのです。今日は、93歳のおじいさん、ハルボジの話を聞いて、どんな思いで日本にやってきたのか、そして、故郷を捨てて日本で暮らすようになったのかを教えてもらいました」。一人一人の朝鮮のハルボジ、ハルモ二がどんな気持ちで暮らしているのか、そのことを、ぜひ、考えてみてほしいのだと言う。日本は、朝鮮を植民地支配し、そのことが、未だに朝鮮半島の人たちを苦しめている、かれらの祖国が今分断されている原因になっている。日本は、朝鮮で、彼らから、名前を奪い、土地を奪った。

 

「ハルボジは、強制的に自分も名前を変えさせられ、日本名を名乗らさせられたと言っていました。創氏改名によって名前を奪われ、書類まで書き換えられて、土地を奪われ追い払われた人がたくさんいるんです」。そうしたことが朝鮮の人々に大きな苦痛を与え、祖国分断というつらさを与えているのだと声を大きくして訴える。そのことを考えるならば、朝鮮学校にこそ、手厚い施策を行うべきではないのか。日本は、韓国とも、中国とも、フィリピンとも、戦後補償の話をし、フィリピンも中国も戦後補償を放棄した。韓国とは、日韓条約で、形の上で、戦後補償をしたことになっている。しかし、日本は、唯一、朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮とは、未だに戦後補償をしていない。

 

「もし、日本が国交回復するなら、まず第一に、戦後補償を考えるべきでしょう。そのことを考えるならば、日本にある朝鮮学校にこそ、きちんと、教育の補償をするべきではないでしょうか。今すぐに、朝鮮高校の無償化を実現し、本当の教育とは何か、そのことをあなたたちが、日本人にきちんと示さなくてはなりません。すぐに、朝鮮高校の無償化を実現してください」。難しい理屈は、一つもない。おかしな理屈をこねまわして、差別を助長し、子どもたちに辛い思いをさせているのは誰なのか。伸一さんの、加害者の立場にある自己を常に問い返す言葉に、同じ日本人のわたしは、足元に針の筵を意識せずにいられない。連帯という言葉の重さを考えている。

 

 学生たちが来なくても、オモニや日本人参加者の声は十分大きい。学生たちがここに立たなくて済む日を願う強い気持ちの表れだ。息子の学習権を求めて、声を嗄らして叫ぶオモニの喉の痛みに日本人全てが思いを寄せてほしいと念ずる。

 

(facebook  Bさんの記事より)

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